2001年8月23日
[目次] [福祉情報工学研究会のトップページに戻る]

視覚障害者のための
タイピング練習ソフトの設計と評価


PDFファイル(975KB):2001-08-wit.pdf

西本 卓也*1, 園 順一*2, 浅野 令子*2, 高木 治夫*2

*1: 京都工芸繊維大学 工芸学部 電子情報工学科
〒606-8585 京都市左京区松ヶ崎御所海道町 TEL:075-724-7492 FAX:075-724-7400
nishi@vox.dj.kit.ac.jp

*2: SCCJ (日本サスティナブル・コミュニティ・センター)

あらまし

視覚障害者のパソコン学習においては、 タイピング練習における本人や介助者の負担が大きいことが 課題となっている。 視覚障害者がコンピュータ操作を独力で習得できることは 重要であるが、そのためには、 画面表示を必要としないタイピング練習ソフトが必要である。 そこで我々は、キーボードと音声出力 のみを用いたタイピング練習ソフト「ウチコミくん」を設計・開発して 製品化した。本発表ではこのソフトの設計および開発の詳細と、 製品の評価について述べる。


目次


1. はじめに

視覚障害者がパソコンを使えるようになることには、大きな社会的意義がある。 従来視覚障害者は点字や朗読テープといったメディアからの情報収集に頼っていたが、 スクリーンリーダーと呼ばれるソフトウェアによって、 介助者なしにパソコンを利用することが可能になった。 特に電子メールやウェブなどのインターネット・アプリケーションを使うことで、 即時性のある情報の送受信やコミュニケーションの手段が得られる。 たとえば新聞を読むという行為に関しても、 従来は人に手伝ってもらう必要があった。 しかし、テキスト化された新聞記事情報がインターネットから入手できるようになって、 好きな時にスクリーンリーダーを用いてニュースを知ることが可能になった。 このようにパソコンの利用によって視覚障害者の情報送受信の利便性は大幅に増す。

もちろん、視覚障害者のための情報ディスプレイ手段としては点字も重要ではある。 しかし、点字が使える人はすべての視覚障害者の10%未満であるという調査もあり、 即時性を考慮するとパソコンなどを活用した合成音声の活用が有効である。

現在、Windows環境対応のスクリーンリーダーソフトウェアが比較的低価格で 入手可能となっている。しかし、パソコンやWindowsの全く初心者である 視覚障害者には、自宅で、介助者なしでは、自らシステムの起動や終了を することさえできない。

そこで、起動から終了まで画面表示やウィンドウ操作を全く必要としない キーボード練習環境を実現し、これにより、 パソコンを全く初めて学ぼうとする視覚障害者が、 介助者なしでブラインドキー操作の練習を行うことを可能とするための システムとして「ウチコミくん」の設計と開発を行った。 本報告では「ウチコミくん」開発の背景について述べ、 続いてシステムへの要求やインタフェース原則に基づいて 本システムの設計について述べる。 最後にシステムの実装、配布と評価について述べる。

目次へ戻る


2. 「ウチコミくん」開発の背景

非営利団体(NPO)のSCCJ(日本サスティナブル・コミュニティ・センタ)は 京都市、京都ライトハウスなどの協力を得て、 1999年5月より「視覚障害者のためのインターネット講座」を開催している。 実際に視覚障害を持つスタッフが独自に指導方法を体系化し、 定期的に開催される講座として生徒を募集したところ、 他府県からを含む多くの生徒が積極的に参加している。 そこで、この教室においてより効果的な指導を行う必要が出てきた。

キーボードに書かれた文字を見ることのできない視覚障害者にとって、 文字入力はパソコンを使う上での大きなハードルとなっている。 にも関わらず、視覚障害者を対象とした 日本語タイピング練習用ソフトウェアは存在しなかった (2000年12月に風の杜工房「キーぼうず」が発売されている。)。 このような背景から、 視覚障害者のためのタイピング練習環境について 非営利団体 SCCJ と京都工芸繊維大学が共同研究および試作を行った。 この成果を元にソフトウェア「ウチコミくん」を設計・開発した。

目次へ戻る


3. 「ウチコミくん」の設計

我々は「ウチコミくん」の試作と評価実験(文献1) (文献2) を通じて、 システムへの要求を整理し、 インタフェースシステムの原則に基づく設計と実装を行った。 以下ではこれらについて述べる。

3.1 システムへの要求

すでに多くのパソコン用タイピング学習ソフトが市販されており、 エンターテインメント性を重視したものや、 指導効果の高さをうたったものなど、 さまざまな製品が存在する。 しかし、これらはキーボードや画面を見ながらキーの配列を覚えることを 前提としている。

以下で挙げるのは、本システムの機能・性能において、 満たすべき基本的な要求である。

3.1.1 音声によるタイピング学習の実現

スクリーンリーダーでパソコンを使おうとする視覚障害者は、 キーボードの表記や画面を読めないことが前提である。 また、タイピングの練習に先立ってパソコンを練習したことがない、 というユーザに対応し、 これからインターネットを利用しようとしているユーザが、 予備知識なしに学習できるものでなくてはならない。

そこで本システムでは、 インターネットの利用に必要な知識を音声出力のみによって伝えることとする。 さらに、キー配列を説明している間、 ユーザは手触りと音声出力に頼りながら、説明されたキー配列を確認でき、 キー配列を確実に覚えるための反復練習も音声出力のみで行えるようにする。

3.1.2 介助者なしでの使用

視覚障害者のためのIT講習会は、 2001年夏から全国的に行われるようになった。 しかし、晴眼者を対象としたIT講習会と異なり、 まず受講者にタイピングを覚えてもらう必要があるため、 支援ツールなしでは時間や人手が不足する、という問題がある。 我々は1999年5月から定期開催してきた視覚障害者向け インターネット教室における知見から、 自宅に持ち帰ってタイピング操作を練習ができるような環境が重要であると 考えてきた。

本システムのメニュー構成を表1に示す。 このような構成によって、画面を見ることができず、 キーボードにも不慣れなユーザが、介助者なしで起動し、練習を行い、 練習後はシステムの終了も行えるようにする。


表1.「ウチコミくん」のメニュー項目
番号内容
00レッスンの準備
01機能キーの場所
02ホームポジション・指の置き方
03左手で打つキーの練習
04右手で打つキーの練習
05両手で英単語を入力(1)
06両手で英単語を入力(2)
07両手で英単語を入力(3)
08ローマ字(1) 「あいうえお」などの入力
09ローマ字(2) 「がだば」などの入力
10ローマ字(3) 「きゃきゅきょ」などの入力
11ローマ字(4) 「びゃびゅびょ」などの入力
12アメリカの州の名前の入力
13短い文章の入力
98ウチコミくんの終了
99Windowsの終了


3.1.3 幅広い環境での動作

広く普及している Windows 対応パソコンで動作するために、 動作が軽快であること、インストールが容易であること、 といったことが必要となる。 デスクトップおよびノートパソコンで動作することが望ましいが、 ノートパソコンのキーボード配列は 機種によって著しく異なるため、現在のバージョンでは、 ノートパソコンにデスクトップパソコン用のキーボードが外付けされている、 という環境を前提にする。

本システムはスクリーンリーダーのない環境でも音声出力が可能な セルフボイシング・アプリケーションとして開発する。 さらに、既存のスクリーンリーダーとも共存することが望ましい。

3.1.4 開発や改良の容易さ

開発を容易にするために、ソフトウェアとして実装する機能を最小限にとどめ、 ユーザへの説明や選択肢の呈示、反復練習などを テキスト形式のコンテンツファイルとして実装する。 これにより、 パソコンの使用経験や指導経験の豊富な視覚障害者が、 自らの指導経験に基づいてコンテンツの開発や改良を行える。

シナリオファイルは1行ごとに記述が完結する形式で、 先頭から1行ずつ読み込んでレッスンを行う。 各行は英文字1文字のコマンドと、 任意の文字数の引数の組み合わせによって与えられる。

3.2 インタフェース基本原則に関する検討

人間とのインタフェースに音声を用いたシステムでは、 特に音声利用の有効性を増すために、 インタフェース原則に基づいた設計を行うことが重要である (文献3)

3.2.1 操作労力に関する原則

本システムはキーボードに不慣れな初心者が主なユーザであることから、 個々のコマンド操作を単純で容易にすることに留意する。 レッスンの選択操作に先立ってテンキーとEnterキーの配列を説明し、 レッスン選択操作は2桁の数字とEnterキーによって行う。

その他、レッスンを進める上で必要な操作も 極力単純なものとする(表2)


表2.「ウチコミくん」の主なキー操作
機能キー操作および解説
リピートEsc を1秒以内に二度押し
直前のマーカー位置に飛ぶ
スキップEnter
直後のマーカー位置に飛ぶ
ポーズPause
再度任意のキーが押されるまで停止する
ホームHome
レッスン選択メニューに戻る
スピード-1Ctrl Shift ←
音声合成の話速を1段階遅くする
スピード+1Ctrl Shift ←
音声合成の話速を1段階遅くする
ボリューム+1Ctrl Shift ↑
音量を1段階大きくする
ボリューム-1Ctrl Shift ↓
音量を1段階小さくする


一方で、操作に必要な時間を短くするためには、 音声出力の終了を待たずともユーザが次の操作を行えることが 重要となる。 本システムでは音声合成おより音声ファイルによるシステム出力の それぞれについて「割り込み可能」と「割り込み不可」の2種類を 区別して記述可能とする。 またコンテンツ記述においても、ほとんどの場合において ユーザによる割り込み操作を可能とする。

また、聞き直したい内容がレッスンの途中にある場合に、 すでに学習した内容をEnterキーでスキップできるようにする。

3.2.2 システムの透過性に関する原則

システムの状態と可能な命令を容易に把握させるために、 入力待ちの開始、メニュー項目の選択後、入力の正誤判定、などに対して 数種類の短い効果音を用意し、状態を音でわかりやすく示す。 また、ポーズ中も数十秒おきに「ポーズしています」という音声を出力する。

また、メニュー項目の選択においては、番号と内容の対応付けを 確認させることが特に難しい。 そこで、項目番号を2桁の数字で選択した直後には 「ルート01 機能キーの練習」など内容を音声で出力し、 ユーザはそれを聞いた後にEnterキーで確定操作を行うか、 他の数字を入力して選択を取り消す、 といった仕様にする (カーソルキーの上下で項目を選択してEnterキーで 確定する入力方法も可能とする) 。

操作の手順を連想しやすく一貫したものにするために、 キーボードの各キーの名称や本来の意味を考慮したコマンド 割り当てを行う(表2)。 また、階層メニューによる操作は排除する。

他のアプリケーションとの一貫性という観点からは、 視覚障害者が Windows アプリケーションを操作する 一般的なキー操作をサポートする(例えばAlt-F4 キーによる アプリケーションの終了)。 音量や話速の制御は、 既存のスクリーンリーダーにおけるキー操作と類似したものとする。 (まったく同一の操作方法であると、本システムと スクリーンリーダーの併用時に、それぞれを個別に制御できなくなる。)

操作に対する適切なフィードバックを与える、という観点からは、 押されたキーの読み上げ(キーエコー)が聞き取りやすいことが 特に重要である。 試作を通じて、合成音声によるキーエコーが聞き取りにくいことが 明らかになったため、キーエコーはすべてナレーターによる録音音声を用いる。 (Aを「エー・アメリカ」などと読み上げる方式(フォネティック読み) も検討したが、本質的な解決ではない。)

3.2.3 頑健性に関する原則

誤入力を防ぐこと、誤入力を容易に修復できること、 という観点は、メニュー選択中とレッスン中のそれぞれについて考慮する。 メニュー選択においては、Enterキーが押されるまで、 数字の再入力またはカーソルの上下キーによって、選択のやり直しを可能とする。 項目番号が00-09の場合も含めて常に数字2桁で入力をさせることとし、 再入力操作を複雑にする要素(1桁単位での入力取り消しなど)を排除する。

レッスン中においては、誤入力を繰り返した場合に、 次に押すべきキーがわからなくなる、といったことが起きやすい。 そこで、一定回数の誤入力があったときに「次に押すキーはA」という 形式の音声を出力する。

また、誤入力の場合に限定されないが、聞き逃した内容を容易にリピート (巻き戻し)できることが必要である。 そこで、リピート操作は特に押しやすいキーに配置する。 109型日本語キーボードにおいて Esc キーは、 キーボードの左端上角にある1つだけ離れたキーであり、 初心者にとっても視覚障害者にとっても覚えやすい。 ただし、リピート操作そのものを誤って行うことを避けるため、 1秒以内に2回連続してEscキーが押された場合にリピートを行うこととする。

3.3 インタフェース構成原則に関する検討

上述したインタフェース基本原則の各項目には 互いにトレードオフの関係がある。 従って実際のシステムは、初心者保護、熟練者優遇、上級利用移行支援、といった システム構成原則を適用しつつ、個別のシステムの事情に合わせた 設計を行う必要がある。

本システムにおける初心者は、キー配列そのものを知らず、 どのキーが何であるかを視覚によって知ることもできない、 というユーザである。 初心者はシステムの起動後、 操作をしないで一定時間待っていれば、自動的に項目00が選択される。 これにより、レッスンに必要な説明を聞くことができる。 次に、手触りのみによってテンキーの位置と配列を説明し、練習を行う。 これによって、テンキー操作と同時に、 このシステムにおける練習の流れも把握できる。 音声に従って操作すれば最後まで説明を聞くことができ、 メニューに戻った後は、自分でテンキーを操作して 学びたいレッスンを探して実行することができる。

本システムにおける熟練者は、すでにいくつかレッスンを済ませており、 項目番号も容易に思い出すことができる。 そこで、システムの起動直後、ガイド音声の終了を待たずに、 数字2桁を入力し、すぐにEnterキーを押すことができるようにする。 これによって熟練者は待たされることなくレッスンを開始できる。

効率的な操作への移行を支援するための配慮としては、 リピートやポーズなどの機能の存在と操作方法を、 レッスンの途中で何度か繰り返してガイドをする。

3.4 レッスンの楽しさに関する検討

タイピング練習ソフトは一般にパソコンの初心者を対象としているが、 タイピングの学習は単調な作業になりがちであるため、 初心者が楽しんで学べることが望ましい。 レッスンの途中で退屈しないためには、 シナリオそのものにエンターテインメント性を盛り込むこと、 技能の上達に対して達成感が与えられること、などが必要である。

本システムでは「先生役」(録音音声や音楽を用いる)と、 「先生の弟子」(合成音声による)を併用するようなコンテンツを用いる。 録音音声によってストーリーを親しみやすくリアルなものにできる。 また、追加や更新が頻繁に行われる部分をテキスト音声合成で実現することにより、 シナリオの作成や改良が容易になる。

本システムにおけるストーリー 「鶴雲斎流・秘伝・五月雨〜アメリカ大陸横断の巻〜」では、 書の大家「鶴雲斎先生」がレッスンの内容を案内し、 弟子の「ウチコミくん」が稽古のサポートをする、 といった状況設定をしたうえで、入力ミスの時には 「何をしておる」 「そこではない」 「違うといっておるに」 といった録音音声が再生される。

目次へ戻る



4. 「ウチコミくん」の実装

「ウチコミくん」のソフトウェアは Microsoft Visual Basic 6.0 によって開発した。 (Windows NT 系で特殊キーのフックを行うために 外部 DLL が必要となったため Borland Delphi 5 を併用した。) Windows 95 以降で動作するアプリケーションとなっており、 Pentium 150MHz 以上のコンピュータで動作する。

音声合成には Microsoft Speech API (SAPI) 4.0 経由で IBM ProTALKER 97 Ver.2.0 エンジンを 使用した。 録音音声には 22KHz 16bit サンプリング非圧縮の WAV 形式ファイルを用いた。 画面表示は、 弱視者にも見やすい黒字に白い線によるイラストを作成し、 これが画面全体に表示され、ストーリーに連動して切り替わるようにした。 ただし、タイピング練習には全く画面表示を使用していない。 画面下部には、ユーザが押したキーの名前のみが表示される(図1)


図1. 「ウチコミくん」の画面

「ウチコミくん」の画面


「ウチコミくん」は CD-ROM からインストールする形式を取るが、 エンハンスドCD形式を用いることで、ソフトウェアの内容や レッスンの方法などをあらかじめCDプレイヤーで聞けるようにした。 インストーラーは InstallShield Professional 6.2 を 用いて作成し、ソフトウェアとコンテンツ、 Visual Basic や SAPI のランタイム、 音声合成エンジンなどのインストールを行うようにした。 インストーラーの操作性においては次の点を考慮した。

目次へ戻る



5. 「ウチコミくん」の配布と評価

製品版「ウチコミくん」 は2001年6月から配布および販売を開始し、 7月末の時点では無償提供で約300ライセンス、有償販売で約250ライセンスが 配布された。

すでにインストーラーやデバイス制御に関する不都合がいくつか報告されている。 また、スクリーンリーダーと音声出力アプリケーションを同時に動作させられない (音声出力デバイスを多重に開くことができない)一部のパソコンでは、 インストーラーに音声ガイド機能を持たせたことによる不都合が生じた。 電子メールやウェブでサポート情報やバグ修正などを公開している。

現在、ユーザへのアンケート調査などを通じて「ウチコミくん」の 最終的な評価を行っている。 表3に、現段階でのアンケート結果の一部を示す。 回答者12名のうち10名は1級または2級の視覚障害者であり、 残り2名は晴眼者である。

アンケートの回答結果から、 「介助者なしでの使用」 「システムの透過性」 「レッスンの楽しさ」など、 本システムの設計において考慮した点はおおむね ユーザから支持されていると考えられる。 ただし、回答者数がまだ少ないため、 視覚障害者でタイピング未経験者に絞っての回答の分析などは 行えていない。



表3.「ウチコミくん」アンケート結果(数字は回答者数)
練習は自分一人でしていますか?
A)いつも自分一人でする
B)たいてい自分一人でする
C)たいてい誰かに付き添ってもらう
D)いつも誰かに付き添ってもらう

5
5
1
1
キー配列の説明は分かりやすいですか?
A)とても分かりやすい
B)やや分かりやすい
C)やや分かりにくい
D)とても分かりにくい

5
5
1
0
次にどのキーを押せばよいか、押したキーが正しかったか、
などのガイドは分かりやすいですか?
A)とても分かりやすい
B)やや分かりやすい
C)やや分かりにくい
D)とても分かりにくい

7
5
0
0
レッスンの間、楽しんで練習できましたか?
A)とても楽しんでいた
B)やや楽しんでいた
C)やや楽しくなかった
D)まったく楽しくなかった

3
7
2
0
音楽や効果音は役に立っていますか?
A)とても役立っている
B)どちらかというと役立っている
C)あまり役立っていない
D)まったく役立っていない

3
7
2
0
レッスンを選ぶ操作は分かりやすいですか?
A)とても分かりやすい
B)やや分かりやすい
C)やや分かりにくい
D)とても分かりにくい

5
6
1
0
巻き戻しやスキップなどの操作は分かりやすいですか?
A)とても分かりやすい
B)やや分かりやすい
C)やや分かりにくい
D)とても分かりにくい

6
4
2
0


盲学校では「ウチコミくん」を導入して教育効果を上げはじめている。 例えば横浜市立盲学校においては、 個人につきっきりで指導する場面での負担やこと細かな注意が必要なくなったことで、 教員は先の見通しを個別に考え、次の個別課題への対策の時間が確保できるようになった。 (横浜市立盲学校の松田基章氏からのメールによる。)

目次へ戻る



6. まとめ

視覚障害者がコンピュータ操作を独力で習得するためのタイピング練習ソフト 「ウチコミくん」の設計について、システムへの要求とインタフェース原則という 観点から整理した。また、Windows 版「ウチコミくん」の実装と配布・評価について 報告した。

今後はさらに多くの環境で安定して「ウチコミくん」が動作するように サポートを続けていく必要がある。 また、より多くのユーザからのフィードバックを得るとともに、 客観評価としてタイピング技能の測定を行うなど、 さらに多面的な評価を行う必要がある。

一方で、音声対話記述言語 VoiceXML を用いることにより、 本システムをさらに使いやすく効果的にすると同時に、 同じシステム上で電子メールソフトウェアの使い方を学習させる ようなコンテンツを作成することも可能となる (文献4) (文献5) 。 このような観点から、今後は本システムに対して ネットワーク環境を前提とした拡張を行っていく予定である。

目次へ戻る



謝辞

「ウチコミくん」の製品化に関わられた 日笠智之氏、山木檀さんをはじめとする多くの皆様に感謝します。 開発途中での評価実験に協力していただいた方々や、 助言をいただいた多くの方々に感謝します。 また、京都工芸繊維大学の新美教授・荒木助教授 およびパターン情報処理研究室の諸氏、 特にソフトウェアの開発に協力した高城敏弘君、板口晋也君の 両氏に感謝します。

なお、本システムの開発は、 平成12年度社会福祉・医療事業団助成事業の支援を受けた。

目次へ戻る



参考文献

[文献1] 高城 敏弘, 西本 卓也, 園 順一, 浅野 令子, 高木 治夫, ``視覚障害者のためのモニターレス・キーボード練習環境'' 第2回福祉情報工学研究会 WIT99-30, (2000-03).

[文献2] 西本卓也, 荒木雅弘, 新美康永, ''視覚障害者のためのタイピング練習ソフト「打ち込み君」の改良'' 電子情報通信学会技術研究報告 WIT00-21, pp.55-59, (2000-08).

[文献3] 西本卓也, 志田修利, 小林哲則, 白井克彦, ''マルチモーダル入力環境下における音声の協調的利用 ---音声作図システムS-tgifの設計と評価---'' 電子情報通信学会論文誌 VOL.J79-D-II, pp.2176-2183, (1996-12).

[文献4] 西本卓也, 住吉悠希, 荒木雅弘, 新美康永, ''視覚障害者のための電子メール環境における操作性の検討'' ヒューマンインタフェース学会研究報告集 Vol.2 No.5, pp.33-38, (2000-12).

[文献5] Takuya Nishimoto, Masahiro Araki, Yasuhisa Niimi, ''The Practical Side of Teaching the Elderly Visually Impaired User to Use the E-Mail'' Proceedings of the UAHCI 2001 Conference, (2001-08).

目次へ戻る


by Takuya NISHIMOTO (nishi@vox.dj.kit.ac.jp)